タンペレ市図書館と同じ設計者。1966年。設計競技で選ばれた、ピィエテラ夫妻の初期の代表作。「記念碑的な姿を持つ教会であること」が、競技の中の条件でした。垂直性を強調した外観ですが、僕はこの建築が普通の集合住宅かオフィスだと思って、通り過ぎてしましました。その意味で、記念碑的な表現としては少し弱いでしょう。外装が単一のタイル貼りだからでしょうか。
正面の祭壇。この礼拝室の特徴は、縦に分割されたコンクリート壁の隙間から入ってくる光。外観の波打つ壁がそのままの形で内部にあらわされています。
天井もリブで水平方向に分割されています。
壁も天井も、「繰り返し」の建築的表現手法。
祭壇から入口への見返し。天井高は30M位あり、高いです。座席数は1120席。
設計者自身がデザインした祭壇のオブジェは、タイトルが「傷ついた葦」。聖書の中のイザヤ書の言葉から名付けられています。
インテリアの仕上げは、少しざらついたテクスチャーで、近づいてみると麻を思わせるような印象。 天井まで目地はなし。
食堂の照明もプレキャストコンクリートで作られたオリジナル。構造である壁柱、天井のユニットなどのフォルムと連動させているデザインです。光源として丸い裸電球を選んだ事は正解です。
空間自体が大きいからかもしれませんが、大味で単調さを感じさせてしまう点は否めない建築。
その理由を考えてみると、正面も側面も背面も、同じ長い縦長スリットからの採光という手法を取っているので、せっかくの高さを持つ縦長スリットからの光が強調されないで、ずるずると 同じ種類・性格の光が各面から入ってきている=正面性が弱くなり、「光」の意味が薄くなっている点。
それから、広い床面と高い天井面の、上下2面をつなぐ間に、もう少し何か工夫して動きがあれば、空間の流動性が生まれたのに、と思います。さらにそうした工夫が、空間の重心を下げるように働けば、結果としては空間の高さをより強調して感じる事になるので、よりベターになると思います。
いつのまにやら、勝手な空間評論家になってしまっている自分が怖いです。
言うだけは簡単、生み出すことは試練。
すでに他界された設計者の意志をくみながら、もしも改装する機会があれば、この天井が高い空間の良さを生かすような改装をやってみたい、と思いました。もったいないのです。
この空間の輪郭は良いものを持っているので、あと、もう少し繊細な味付けをすれば、もっと感動を与えてくれる空間になる可能性があると思いました。