school architects blog
フォルコシュレイトの斎場

0僕が学生の頃から、「いつかは見てみたい」と、憧れ続けていた建築。30年の時間を経て、ようやく今日、逢う事ができました。今日は朝からいいニュースも聞いたのでダブルで幸せに。外観。

1来てみて初めて知った事は、建築ではなくインテリアデザインでした。斎場の最後のお別れをするための部屋が3つあり、その真ん中。建築家、イムレ・マコベェッツ。42歳の時の設計。    ハンガリーのブダペスト郊外にあります。彼は3年前の75歳で他界されました。

2入口ドア。もうすでに神秘性が伝わってきています。木製。

3掌を両側から差し出して空間をつくっています、みたいなメッセージが伝わってきます。

マコベェッツは、48歳で独立した遅咲きの建築家で、ブダペスト工科大学卒業後に、役所勤めや国立研究所で研究や設計を行っていました。

さて、いよいよ内部空間は、

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扉の内側も、同じデザイン。手仕事です。

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どうでしょう。明らかに動物のあばら骨の中にいるような空間をつくっています。

想像していたよりも、小さな空間でした。空間の密度が高いので、写真を見ると大きな空間に見えてしまうのだと思います。箱の中の空間デザインで、ここまで迫力を出すことができるデザイン力。やはり、死ぬまでに来て良かった、と思い満足しました。

ちなみにこの部屋の左右横の、別の建築家が設計した空間は2つとも同じ空間です。

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天井の木製の垂れ下がりルーバーに特長のある空間。

見た後に、トラム、電車を乗り継いで、2時間後に、シオーフォクという街に到着。ここにも、彼の建築があります。シオーフォク・ルター派教会 1990年。

1顔、羽、翼、角、仮面、などの言葉を連想させる建築。

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3丸い窓の横にあるこの羽は装飾ではありますが、この建築が表現したい事のためには、なくてはならない大事な部分。斎場の入口扉のように。この建築の内部空間は6月~8月のみの公開。

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「何か」を建築の形で表現したいと思ってデザインされた建築の事を、「表現主義」と呼びますが、彼、マコベェッツの場合には、その中に納まらない、民族や生命という、根本的な「暗さ」を持っているように思います。暗さが似合う、というか暗さの中でしか、より深く身体で理解できない建築。こういう建築に魅かれてしまう僕もやはり「暗い」のでしょうね。雲の重い、山陰地方出身だし。

僕が30年間、想い続けてきた彼女は、自分で期待していたほどの大きな迫力と感動はなかったのですが、小さいながらも黒檀のような硬度を持つ素晴らしい空間でした。逢えた事実に感動しながら、彼女の魅力はすでに憧れではなく、僕の許容範囲内であったことに戸惑いを感じました。でも逢えて嬉しいことにはかわりありません。僕が21歳の時に知った建築ですが、この斎場を マコベェッツさんが設計した時の42歳という年齢を、僕はすでに超えてしまったので、こういう感想を持ってしかるべきだろう、と思います。小学校の時に遊んだ校庭や公園は、今見ると、とても小さく感じるものだし。

でも、憧れていた彼女に逢えたので僕の建築設計の折り返し地点を 無事に通過させてもらったような気がします。マコベェッツ先生、卒業させていただきます。本当にありがとうございました。

 

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. 建築が環境を破壊するものであることは疑いようもありません。 一方、ある目的のためには、空間が必要であることも事実です。 犠牲にしてまでつくられる空間とは、一体どうあるべきなのでしょうか。空間の「質」は、広さだけの尺度で判断することは出来ません。単なる箱をつくるのではなく、空間のかたちや光、音、雰囲気など、人々にとって、記憶に残るような魅力を持つものを残していきたいと考えます。 次世代から現在の環境を預かっている、という立場に立ち、 建築・インテリア・家具・まちづくりのデザインを行います。

フォルコシュレイトの斎場 への3件のフィードバック

  1. 関口 正春 says:

    トップの画像、お別れの部屋の前に停車している小さなクルマ、気になります。素晴らしい建築やインテリアを引き立てるように、設備や備品が造られたり選ばれたりしているのでしょうね。別れ難い故人との、最期のお別れの空間。故人が居なくなってしまった世界で、生きていかなくてはならないんだという、諦めを受け入れる空間。そんな風に使われている様子を勝手に想像してしまいます。考えさせられました。ありがとうございました。

  2. school-a says:

    関口さん ご推察の通りだと思います。小さな形式の古い車は、ここから広大な墓地に行くための小さなガタガタと走る車です。

  3. tomo says:

    建築に嫉妬してしまいました。

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