ベルリン・フィルハーモニー コンサートホール。ハンス・シャロウン設計。1957-1960設計、1961-63年に工事。金色に輝く、ドイツ表現主義の代表作。
どこから見ても、一つとして同じ表情はない。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地。
竣工当時は、予算がなかったため、コンクリート壁に黄土色塗装でしたが、1980年代になって、設計時の今の陽極酸化処理されたアルミプレートに包まれました。シャロウンは1972年に他界されたので、この金色に輝く姿は見ていません。たぶん天国で喜んでいるはず。
外観は、内部空間を形として素直に表し、内部空間は、上下階のかたちを素直に表現しています。入ったロビーの上部には、大ホールの壇上の客席が乗っているために、このダイナミックなマッシブな形状です。
外部に向かって、流れるような動きがあります。
どこにいても、内部空間に風景があり、飽きることがありません。足元には、
床のモザイクタイル模様が。ベルリンの公共建築では、建築費用の1~1.5%を建築内に「アート」として盛り込むことが義務になっています。100億円なら1億円をアートに。理解があります。
床や、壁のカラーガラスブロック、壁を飾る芸術作品などがそれ。
50年たっても、色あせしない円形のガラスブロック。
ランダムだったり、グラデーションしたり。
照明器具も柔らかなデザイン。もちろん、シャロウンのデザインです。
これですが、近年、「IKEA」さんに真似された、とのホール関係者の言葉。確かにそうかも。
このように、階段や上階の廊下、構造体の柱と梁など、かなり複雑なホール空間。
優雅な らせん階段は、現場打ちコンクリート。型枠模様を現しの上の塗装仕上げ。それを触ったり、登ったりして確かめる学生達。
階段。上に上がることを誘うようにカラフルな光が差し込みます。
ちょうど、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のリハーサルでした。息を飲んでしばらく静かに聞き入ります。従来の1方向のステージではなく、世界で初めて、ステージを囲むように配された客席。
天井のうろこ形の凹凸は吸音のため。吊り下げられた羽のような板は周到に音響効果をシミュレートされた反射板。
最上階から見下ろした客席。客席の微妙な角度は計算され、模型で実験して決めていかれたそうです。
90分、ゆったりと官能的な空間を堪能しました。学生達も満足そうでした。建築空間の学びは、実際にその場に身を置いて感じることでしか、本当に身に着くものにはなりません。
僕自身も初めて中に入りましたが、内部機能を素直に形で表現し、かつその形が美しく、ダイナミックにバランスが取れていることに驚き、感動しました。
モスクワにある、劇場の客席のかたちを外部に突き出している、ロシア・アバンギャルド代表選手の建築家、メルニコフのルサコフ労働者会館を思い出しました。でもルサコフには、内部空間の官能性はまったくありません。
ドイツ表現主義。前回紹介のアインシュタイン塔の外観も感心したのですが、このシャロウンの建築は世界遺産になっておかしくない建築です。
ロシア構成主義。左右対称形でシンボリックなフォルムが、カッコいいのは確かです。
フォルマリズムと言われる所以です。かつて僕は大好きで、当時のソビエト連邦を1ケ月かけて見て回るほど、傾倒していたのですが。ドイツ表現主義のほうが、建築としては深いです。
次回は、同じくシャロウン設計の図書館を紹介します。 (いつになるかはわかりませんが。)