「DogA」 という名称の、ノルウェー デザイン・建築センター。2005年にオスロ市内から移転しました。(世界の建築・街並みガイドさんの情報は間違いです) 理由はもっと広いスペースが必要だったから、という事。Norsk Formという組織が運営しています。デザイン一般と建築デザインの情報を集めて、発信している25人で運営されている組織です。で、このセンターは、そのノルウェー デザイン・建築財団と、ノルウェー デザイン協会がつくった場所です。財団の方は、デザインや建築を通して人々の毎日の生活を豊かなものにしていくために、教育的プログラムや展覧会、デザイン競技などを主催している団体。協会の方は、ノルウェーの工業や経済を活性化するための活動を行っている団体。つまり、文化的な団体と商工的な団体が力を合わせて運営している場所が、このDogAです。羨ましいです。
まずはその建物の紹介。
入口。工場をリノベーションしたもので、このガラス部分だけを増築しています。
玄関を入って、地下に組織の事務所への入口があります。
中に入ると、インテリアは工場のままの部分を残しています。ただし、手を加えている部分はとてもデザインされています。「デザインセンター」なので、あたりまえですが。
左にはデザインショップ。中でも、僕が昔、集中して行っていた、室内で遊ぶことのできる子ども用の家=カビィ・ハウスのキットも。4ミリの薄い合板で組み立て。ジョイントもシンプルで長持ちしそうです。敗けました。(敗けるという以前に、こんな物があったらいいな、と思って考えるんだけど、試作品を作った段階で、すでに飽きてしまっている僕の性格が悪いのです・・・)
車椅子用のリフト。本当はこのようなシンプルなものでいいんですよね。絶対にエレベーターでなければ!という日本の役所にも、もう少し融通をきかせてほしいものです。
多目的ホール。講演会やワークショップ、パーティなどを行う場所。340㎡。奥には2階にあるホールの全面ガラス窓が見えます。
各部屋の天井は貼っていないので、音を吸音するために(おそらく)付けられている、三角形断面の「スポンジ」。安価で効果を出す材料を、「三角形に加工する (もしくは他用途として流通している物かも?)」行為を行うことで、その価値が数倍にアップ。しゃれています。流石デザイナー。
この1階から地下に行く大階段。この吹き抜けの周囲はオフィス。
下のホールは、打ち合わせスペースですが、椅子はすべて、ノルディックデザインの有名な物をそのまま使用。素晴らしいです。極めて機能的オフィス+ショールーム+プレゼンルーム。
階段室と廊下兼ホールで講演会やパーティもできるように、階段の左側には傾斜に沿ってもうけられた段。あちこちにクッションが置かれています。コンクリートの段なので固くて冷たいし。
2階にも、バーがある多目的ホール。130㎡。カラフルな面の反対側は、1階の340㎡のホールを見下ろすことができる全面ガラス貼り。つまり、上下のフロアをイベントによっては、ガラスを開けて、連動させることが可能。素晴らしいです。
財団、協会のオフィス空間。シンプルです。ここに25名が勤務。
さて、ここからようやく、子ども建築教室の話。
専用のワークショップスペースに備え付けられた収納倉庫。木材の棒や布、ブロック、金具などの秘密グッズが山盛りありました。これらのワークショップ用の道具欲しいと思いました。日本で、コツコツと揃えていくしかない。
この青、黄色のクッションは、積み上げて空間やアーチをつくるためのもの。これは幼児から高校生まで使う事ができます。空間や建築を身体で理解するためのグッズ達。
黒板になっている壁も。さて、この空間で、どういう建築教室が行われているかというと、
棒の上を歩くと、棒がしなる。棒の端部にどういう向きで、どのくらいの力がかかるか体感。渡る子どもも足の下の棒の反応を体験。プリミティブだけど本質的な体験。
棒と布で空間をつくって、その中を歩くと、どういう感じがするか、体感。幅を変えてみて、高さを変えてみて、といろいろと体験。面白いですよね。
こうした建築デザイン体験型ワークショップは、すべて、Alf Howlid さん(NORSK FORM シニアアドバイザー)が考案されたもので、道具・装置も手作りでした。その熱意と工夫に感動しました。
このような体験型ワークショップを、このセンターや小、中、高校に出向いて実施されているそうです。財団の目的の中に、①センターに子ども達を集めて、デザイン・建築の面白さを伝えること。②小中高校の「先生」に、デザイン教育プログラムを知ってもらい普及させること。という2つがある、と明快に言われていました。したがって、実践したプログラム内容や企画した内容は、各学校にも通知して情報を発信しているそうです。
では、「学校と一緒に開発したほうが早いのでは?」と聞いたら、「財団は文化庁から支援を受けていて、学校の管轄の教育庁とは違うから」、との答え。なるほど、管轄する行政組織が異なると連携しにくくなる事は、どこの国でも同じですね。交流実績を積み上げていくしかないですね。
例えばこれは、三角錐という構造的に一番簡単で強い形式の実物。丸材のジョイントは、アルフさん自作の、車のラジエターパイルを3本切ってボルト留めした物。素晴らしいアイデアです。残っている穴は?と思うでしょうが、この三角錐は、さらに連結していって、立体トラスになるのです。
アルフさんが、僕に力強く話されたことは、「建築の形、構造の仕組み、デザイン、歴史を、写真や映像で見せて教えようとしてもダメ。映像は世の中にあふれすぎているので、子ども達が自分の身体で実際に感じることが大切。小さな模型を作っても、身体に訴えないからダメ」。 まったく僕もその通りだと思います。
自作加工のラジエターパイプを見た瞬間に、僕は嬉しくて笑い出してしましました。どうして嬉しくなって笑ったかというと、デザインの苦労がわかったから。その後からは身長190センチあるアルフさんを急に身近に感じて、教育の思想を持って、かつ方法を創意工夫しようとしている志を同じくする先輩だと、確信し尊敬しました。
アルフさんの自慢は、ラジエターパイプと木材が抜けないようにするために、くさび型の木を差し込む事、しきりにこの点を強調されるので、「ああ、日本でいう楔ですね。昔からあります。」 と 言ったら驚かれて、「えっ本当!いつからあるの?今でも建築で使ってるの?」 面白いです。
「日本で、このアイデアを真似して同じようなワークショップを実施しても怒らない?」と聞いたら、「もちろん問題ない。可能だよ。でも僕を日本に呼んだほうがいいと思うよ!」という返事でした。日本が好きなようなアルフさん。飛行機代だけでいい!と言われていたので、どこかから資金を調達して、やってみたいな、と思います。
もしも興味をもたれたら、アルフさんのWebSiteをご覧ください。代表的なワークショップの映像もあります。http://norskform.no/en/Themes/Undervisning/Tidligere-prosjekter/Uteverksted1/
9分にまとめたビデオは、http://www.youtube.com/watch?v=HG8196TWN18
ここで知った事はフィンランドやスウェーデンやシカゴとはまた違った子ども建築教育。とても参考になり、帰り道では、僕は歩きながらの笑顔を隠すことができませんでした。デザイン建築教育の方法や内容について世界へ汎用性を持つ新しい可能性がまだまだありそうです。 訪問して良かった。
自動販売機の水やコーラは1本600円で日本の4倍。マクドナルドのハンバーガー 1個600円、普通のレストランでは 1個2000円。暮らす事は絶対に絶対に嫌ですが。
記事を大変興味深く拝見いたしました。
私は広島で5年半ほど子ども向けの建築的ワークショップを
してきました。
昨年愛知に越してきてこちらでもやりたいと思っています。
このサイトを拝見して
子どもたちに体感してもらうのは
非常に楽しく効果的であると思いました。
(私たちもたくさんのティッシュ箱でイグルーをつくったり
大人が大きなシーツを持って広い空間せまい空間をつくって
子どもに中に入ってもらうということをしたりもしました)
身近な素材を使った模型作りが半分、
そうした体験や実験が半分、という感じでした。
まだまだどんなプログラムがいいのか
試行錯誤でそうしたことを学べるところや
一緒に学べる仲間がいないかこちらで探しているところです。
そんななかこのページに出会えてとても嬉しく、
コメントさせていただきました。
現在一主婦で資金源は全くあてがありませんが
アルフさんがこちらにお越しになられるときは
ぜひとも参加したいと存じます。
葉山先生の『たくさんのふしぎ 中に入ってみよう』も
拝読、とても興味深かったです。
(97年ごろ、京都の環境市民という団体の一員として
武生駅前コンペ―蔦を這わせるモニュメント―で
先生にお知恵を拝借したと記憶しています。
工芸繊維大学ご卒業の堤さんとのご縁で…
その節はありがとうございました。)
(もし記憶違いでしたらすみません)
吉橋久美子
吉崎さま
大変ご無沙汰しています。いまだにお名刺は持っています。建築教室されていたのですね!ぜひ、情報を共有させてください。楽しみにしています。葉山