アアルト設計の図書館。1965年の作品。内部はロヴァニエミの図書館と同様に、放射状に書庫が並んでいて、中央に一段下がった閲覧室があって、光は・・・・・・・、と言葉で書いても、よくわかりませんよね。ということで、今は中に誰も入ることはできず、写真がないので、スキップします。閉鎖しているのは、すぐ隣に新しい図書館がオープンしたからです。2012年。ビッキ教会と同じ、JKMMアーキテクツの設計です。
道路側から見ると、黒い塊り。偉いと思ったのは、町役場や教会や劇場に配慮して(たぶん)1階建てとして、高さを抑えています。
玄関入り口側。パースが効いてしまっていますが、四角の箱の内側に入り込ませた壁面・軒天処理の形態。この面のみが白色。物理的に長いので、迫力はあります。高松市丸亀の猪熊弦一郎美術館の低層版みたいな。ちなみに、その猪熊美術館の外観は、
この谷口さん設計の建築は、設計精度・施工精度共に高い建築です。それは置いておいて、
黒い壁は、鋼板のウロコ貼り。少し奥がメッシュになっているのは、同じ材料で覆った設備置き場。水処理からの鋼板ジョイント+デザインを考えての結果としての、この形だと推測。
出隅部分は、材料の違いで角別れ。ですが、もう少し、白ペンキは丁寧に塗ったほうが良かったですね。設計したオフィスからクレームなかったのでしょうか。僕なら「ペンキのタッチアップはできません」、と言われたら自分でハシゴで上がって、きれいに落とすけど。(たぶん。怖いけど)
エントランスホール。天井には、グラフィカルな模様。円管蛍光灯吊り下げのシンプルさ。
受付+レファレンス。同じ空間の一部を、仕上げ材料と色で床壁天井すべてをパキッと分けて。
閲覧室。ここの天井は、コンクリート打ち放し仕上げ。窓際では、結構な天井高さ。下右:ハイサイドライトのサッシ枠は躯体に打ち込みで、見せず。四角のガラスのみの見せ方。シャープ。
右手側は段状に降りていきます。コンクリートはカクカクした面の構成で、マッシブな構成。
下階への階段と兼用した、ここも閲覧スペース。座って本を読みます。イベントもできますね。 段寸法に合わせた、オリジナルクッションはL字型の可動式(というか、置かれているだけ)。
この下に降りた場所には、楽しい子ども用の閲覧スペース+音楽、映画資料コーナーです。
壁に穿たれた、穴。押入れの中に入るように、ここに、こもります。さすがに大人はいませんね。
内部の床、壁天井ともに、カーペット仕上げ。壁と穴のカーペット部分のジョイント。よく継ぎ目を見せないようにできたものだと感心。外部ペンキは、はみだしているのに。
いくつかの穴には入り口が複数あったり、穴同志が中でつながっていたり。小さな子ども達には楽しい空間であることは間違いないでしょう。すべての穴のデザインが異なっています。
内側は、読む場所。外側が書棚の2つの機能を持つボックス家具。この箱はお花畑。
この箱のテーマは、海でしょう。けっこう、不気味な感じもしますが。
壁際の書棚は、ぶつからないように、壁に埋め込み。安全性が考えられた親切設計。
子どもスペースのマシンも、子ども用にデザイン。画面を見ながら、遊びながら貸し出し+返却。
面白いので、何回もしたくなるでしょう。
玄関ホールの片隅にあるトイレ。絶対、どこがドアなのか、はじめはわからないはず。インテリアデザインとグラフィックデザインが融合したもの。ちなみに、この建築デザインは、アスモヤーリさんで、インテリアデザインはパイビメウロネンさん。2名が協力した建築。
デザインセンスのシャープさと、コンクリート面を元気よく構成した秀作だと思います。とりわけ、子ども用の空間は、楽しさと配慮があり、好感を持ちました。というより、僕が入ってみて気持ち良かったです。 大人も子どもに帰って、体験したくなる空間。
以前、ユニバーサルデザインが喧伝されていました。日本中の公共行政団体は、こぞって、これからは老若男女すべてに優しい、ユニバーサルデザインだ!と。これはデザインすることにおいては、大事な視点だと思います。あくまでも機能的な意味で。 その後、インクルーシブデザイン(社会性を持つようなすべて包み込むようなデザイン)と同義語のように扱われてきました。 僕は、デザインを考える視点は、まず初めにエクスクルーシブであるべきだと思っています。デザインする本人が楽しんで、これは絶対に自分が欲しい!と思うものでなければ。その視点からの「優れたデザイン」は、インクルーシブなものになっているはずではないか、と思っています。言いかえると、まずは、個人としての楽しさを感じる優れたデザインであるべきで、その楽しさを感じるデザインの力は、社会性を持つべきクオリティであるべき、ということになるでしょうか。 少し、ややこしいですね。 (98)