school architects blog
アアルト自邸

1933年にトゥルクからヘルシンキに戻ってきた(ヘルシンキ工科大学卒業)アルヴァ・アアルトが自宅兼設計事務所で使用していた建築。レンガに白ペンキ、木部ルーバーの濃茶と建具の白木のコントラスト。道路側の窓は玄関の1つだけ。

道路と反対の庭側。つたが絡まっています。1階は事務所と食堂、居間。2階はプライベート寝室。少し張り出した2階部分やピロティになっている部分の軒裏は、波板鉄板(溶融亜鉛メッキ)のシンプルさ。一番外側に貼られている仕上げの木は下に出して、面をつくっています。

玄関。階段になっている石の延段は、あくまでも不正形に自然な感じで。入っていく人の目に入るように効果的に緑を配しています。

 

そういえば、スタジオのアプローチのスロープで、おやっと思ったことがありました。どうして、手すりが壁から40センチ近くも離れているんだろう、と思って頑丈そうな金具を見ていたのですが、よく見ると地面の植栽が成長しても、手が手すりに届くように、という配慮でした。流石です。

 

 

 

1階スタジオ。吹き抜けで中二階には書棚と机があります。この部屋の上部には大きな窓がありますが、北側なので、直射日光は入ってきません。

壁の仕上げの一部は、葦を編んだ材料。この藁のむしろか、畳のような素材が好きなことを強調するように、T定規と共に、麦わら帽子もディスプレイ。

 

 

角の庭の景色を望む一番いい場所が、アアルトさんの席だったそうです。アアルトさんが自ら描いたドローイング。フィンランドの自然のイメージなんでしょう。これも。右は板の上に、木材を割っていって、曲げているレリーフになっています。一度加工して整形になった木材に命を与える試みをしているように印象受けました。面白いです。

左:本棚の壁固定用の支えと棚板。あえて、三角と板の間にジョイントとして丸棒をかませています。この丸棒があることで、2つの関係を取り持っています。これがないとおそらく無骨に見えます。あったほうが綺麗な収まりになります。(僕が言わなくても皆さんわかりますよね)

いつも学生に言っていること。AさんとBさんだけで親しくいると、時には喧嘩することもありますが、その時に大事なのが2人の間に入る3人目のCさん。そう、「子は鎹(かすがい)」と同じです。そういえば大学経営は、法人経営と教学経営の2者。京都精華大なら、学生組織を3人目として常時大学経営に入れたいものですね。こちらでは、学生が一流企業の経営戦略を立てて提案していますから無理な事では断じてないはず。

右:天井までの本棚には、移動式ハシゴ。ハシゴがずれないように、棚板の手前が上に丸く出ていて曲げられた鉄パイプが引っ掛かるようにできています。

居間。スタジオとの境には、大きな引き戸で、編み込み材料仕上げ。すべて開くと3メートル近い開口。その引き戸の取っ手は、下の左。指だけが引っ掛かる寸法で繊細。白木の丸棒は直径25ミリで上から下までの戸の高さに揃えてあります。つまり、この引き戸は、壁の扱いでしょう。

下右:換気用にガラス窓の横についている内開き戸。外部から見ると、外壁と同じ面、同じ仕上げにしてあるので、この戸の断面はこのようになります。右から、外壁仕上げの板、下地のはめ板、寸法調整木材、戸の順番。したがって、かなり重い物ですが、80年経っている今でも開きます。

ダイニングに置かれている作り付けの食器棚。扉はすべて引き戸。引手は金物を使わないで、彫り込みのみ。端部が半円形の取っ手金具や、掘り込みはすべての家具で使われています。これは日本の影響ではないでしょうか?正方形が6つ。

これもダイニングとキッチンの間仕切り収納カウンター。例によって、両サイドから使用可能。   取っ手はさきほどの形の金属製。


1階から2階へ。飾り棚は、はじめから植栽を置くように考えたのか、タイル貼りで壁との見切りに木材を入れて、鉢が落ちないように配慮されていました。(深読みかも?)

これは2階の主寝室。ベットのヘッドボードもスタジオの壁で使われた葦を編んだ素材。2階には、階段を上がった暖炉のあるホール(下の写真)から、大小4つの個室が並んでいます。

バスの洗面。器具も水栓金具も極力丸みを帯びたものが選ばれています。可愛らしい。

最後もディテールで。ドアノブは回転部が細く、端部は大きめに開いていて、握ると安心感を感じます。階段手すりは、先ほどの引き戸と同じ直径で壁との間は指が入る程度の隙間で、つまんで握る感じの繊細感。

純粋なスタジオとは違って、自分の住まいだからでしょうが、スケールが1階スタジオ以外はヒューマンです。材料も自然の葦の網布や、白木が多いので落ち着きます。しかし、ダイニングの家具や建具の扱い方は、少し以前の日本の香りが明らかにします。

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. 建築が環境を破壊するものであることは疑いようもありません。 一方、ある目的のためには、空間が必要であることも事実です。 犠牲にしてまでつくられる空間とは、一体どうあるべきなのでしょうか。空間の「質」は、広さだけの尺度で判断することは出来ません。単なる箱をつくるのではなく、空間のかたちや光、音、雰囲気など、人々にとって、記憶に残るような魅力を持つものを残していきたいと考えます。 次世代から現在の環境を預かっている、という立場に立ち、 建築・インテリア・家具・まちづくりのデザインを行います。

アアルト自邸 への1件のフィードバック

  1. OBATA says:

    建築について細かなディテールを紹介されていて楽しく読ませていただきました。
    お話に出てきました本棚ですが、最近では以下のURLのような物も販売されています。
    ブログ写真を見た瞬間に、あ、っと思いました。丸棒はないのですが。
    http://www.sempre.jp/item/115716/

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