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フィンランディア・ホール  (最終回)

1記念すべき108回目のために、残しておきました。1975年のアルヴァ・アアルトの代表作品。道路側からの外観。このホールを、彼が考え始めたのは1962年なので、64歳の時から1976年に他界する直前の77歳まで関わってきた建築。さぞかし思い入れの入った建築だろうと思います。

2その裏側、海に続くテーレ湾公園側からの外観。長い建築。

3コンサートホール、会議場、会議室、レストランなどの複合施設。メインのコンサートホールを、国際会議も可能なように、というプログラムであったため、ホールの音響効果に関して評判が良くなくなってしまったという、いわくつきの建築。

4道路側の玄関アプローチ。外装は白色大理石。と言われていますが、この国で大理石を外装で使用すると、雨が石の内部で凍ってヒビ割れを起こすので、かと言って、白色グラニット(御影石)は雨に濡れると黒くなる。そこで、国中の関係者が考えて、樹脂を混入した大理石を開発し、外装に使っているそうです。自然材料を現代に使用できるように、少し人工的に手を加える。アアルトが木材、集成材で行った姿勢と同じです。国を代表する文化施設として、「白色」が選ばれました。青い空にコントラストをつけ、雪の空に同化し、白樺林をイメージするからだと推察します。

6玄関のピロティ。

ロビー玄関を入ったエントランスホール。外部には連続した開口の窓。「人と自然との一体化」を意図したとの事。床はイタリア産のトラバーチン石。

青タイル青タイルの壁。

白タイル白タイルの柱。

ベンチ1

ホールの窓際。外部と内部の床の高さをそろえています。

下:3階までの各階平面図。アアルトの照明器具の光が、映り込んだ貴重な写真。(本当はやむなく) アアルトは生涯で、34種類の照明器具をデザインしたそうです。    恐るべき執念。

左から1階平面で、右から玄関に入って。このホールは 中央部分。

扇型の大ホールに架けられた傾斜屋根が1枚目の外観の銅板葺きの屋根。オタニエミの大教室と同じ。

P1000275 - コピー上の部分が後に増築した小ホールと会議室、サービス部分。

小ホール増築した小ホール。

天井天井には、音響効果を考えた、リフレクトの木製パネルを吊り下げ。

VIP1VIPの応接、会議室。天井高さ一杯に吊られたタペストリーが美しい空間。

vIP2ここのテーブルにも癖がありますね。

ホワイエ階段を上がって2階のホワイエ。ホワイエは、ピアッツァ(広場)だと、アアルトは言っていたそうです。したがって、喫煙可能で飲酒もOK。その結果、カーペットが焦げたり汚れたりしますが、このカーペットはそのような事にも耐える素材が選ばれています。イギリス製。

パイプホワイエの窓際。注意深く見てもらうと、壁柱の部分に、細いパイプがクネクネと配されていることがわかると思います。これは、温水が通っている暖房用のパイプですが、同時に、室内に植物のツタを壁に生やすための支柱でもあります。同じ手法は、セイナヨキの劇場(1987年)でもありました。今はプランターは置かれているものの、残念ながらツタは絡まっていません。

内部1いよいよの大ホール。ゆったりとした椅子で、1700席。2階席のかたち、壁の吸音を考えた、青いレリーフ(傾斜や曲線をつけて、波のように)、天井の音響反射板ルーバーなど、全体として調和が取れている大きな空間。おそらく、客席が連続した1つの面に見えて、天井面はリズムを刻んだ複数の面、壁バルコニーが奥から正面への流れを持ち、それを浮き彫りにするための濃い青のレリーフ、という役割分担だと思いました。

手を叩いてみると、少し残響時間が短いのかな、と感じました。

内部2正面を見ます。国際会議も行われるという前提なので、背景として白を基調にしています。

内部3後部座席。かたちの構成が破綻なくダイナミックに。空間を見ているだけで、きれいだなあ、と感じるのは、設計者が空間を把握し、感じる人の事を考えて決めているセンスの良さなのでしょう。

内部4稲妻形の2階バルコニー。正面に向かう力のベクトルを生み出しています。下部の垂れ壁はそのための飾りですが。面をずらして重ねて奥行を出している効果は、とても大きいと思います。

客席上品な前後左右にゆったりとした、椅子席。

アアルトは、ル・コルビジェやフランク・ロイド・ライトなど肩を並べる巨匠と呼ばれる建築家と違って、あまり文章を残していませんし、著作もありません。作品発表の際にも、機能的な説明を書く程度。しかしながら、空間が人間に与える影響の事は誰よりも真剣に考えていたに違いない事は、体験すれば肌で感じさせてくれます。

以前も1度引用した、アアルトの言葉を最後にもう一度置いて、僕の「フィンランド建築レポート」の締めくくりにしたいと思います。

 

「建築、その真の姿は、その中に身を置いた時に初めて理解されるものである。」   (108)

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. 建築が環境を破壊するものであることは疑いようもありません。 一方、ある目的のためには、空間が必要であることも事実です。 犠牲にしてまでつくられる空間とは、一体どうあるべきなのでしょうか。空間の「質」は、広さだけの尺度で判断することは出来ません。単なる箱をつくるのではなく、空間のかたちや光、音、雰囲気など、人々にとって、記憶に残るような魅力を持つものを残していきたいと考えます。 次世代から現在の環境を預かっている、という立場に立ち、 建築・インテリア・家具・まちづくりのデザインを行います。

フィンランディア・ホール  (最終回) への1件のフィードバック

  1. school-a says:

    あとがき:しかし、1回書くのに最低でも2時間はかかっているから、2時間×108回=216。216÷8時間=27日。1ケ月分、僕はこのブログで働いたという事ですね。でも自分の記録にもなって良かったと思っています。飽きっぽい僕が、よく継続できたなあ、と思います。継続する事ができた原動力は、大学から育って行って、各自の世界で生きている卒業生たちへなにかメッセージを送りたかったのかもしれません。今は、あとがきとして自分で自分へコメントを書く自分。トートロジックな行為だから、返事は誰からも来ないでしょう。 いや、僕がこのコメントに自分に返事をすべきかな?。という事は、1人漫才?。パラドクスに入りますね。それも面白い事。あと残りの20年間、今まで経験した30年分の建築の世界を展開して、少しでも誰かの役に立つ活動、かつ自分でも楽しむ活動ができれば面白いな、と思っています。20年と思っていながら、もしかしたらスッと明日に終わるかもしれないし。 HAYAMA

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